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フランス人はプラスチックとどう付き合っている?「ごみゼロ国際デー」で私たちが考えたいこと

3月30日は「ごみゼロ国際デー(International Day of Zero Waste)」です。
これは、2022年に制定されたばかりの新しい国際デーです。前編では、世界における現在のごみ問題について見ていきましょう。

約半数が不適切に処理されているごみ

近年のテクノロジーの目覚ましい進化によって、私たちの生活はわずか10年前と比べても遥かに便利になっています。現代人が暮らす上で発生する課題の多くは、テクノロジーによって解決されています。しかし、ごみ問題に目を向けると、必ずしもそうとは言えない状況です。

さて、世界中のごみのうち一体どれくらいが適切に処理されているでしょうか。答えは、約半分です。世界で出される一般ごみの約半数である45%が、環境上不適切に処理されているという2020年のデータがあります。これほどテクノロジーが発達したにも関わらず、世界のごみ処理問題は道半ばです。人が生きていれば、その数だけ消費活動が行われ、そのぶんごみも発生します。世界の人口が80億人を突破した今、ごみ問題は喫緊の課題なのです。

ごみ問題のうち、全世界共通の課題は海洋プラスチック問題です。海に流れ込むプラスチックの量は、少なく見積もって年間800万トンと言われています。数字だけを見れば、まるで海が巨大なごみ集積場と化したかのようです。

プラスチックごみが海へと流出すると、太陽の紫外線や波によって5mm 以下のマイクロプラスチックへと砕けていきます。しかし、プラスチックはどんなに小さな破片になっても、自然に還るには400年以上の歳月がかかります。つまり、海に流れ出たプラスチックは滞積する一方なのです。命を落とした魚や海鳥の胃袋を調べるてみたら、プラスチックの破片でいっぱいだったというニュースを耳にすることは決して珍しくありません。

その影響は海洋に暮らす生物だけでなく、私たち人間にも及びます。魚介類を食べることで、マイクロプラスチックが人の体内に入ることが懸念されています。そして、怖いことにマイクロプラスチックが人体にどのような影響を及ぼすのかは、まだ解明されていないのです。

では、魚介類を食べなければ問題ないかというと、そうとも言えません。海水から作られる塩もマイクロプラスチックに汚染されている可能性があるのです。塩は人が生きていくうえで欠かせないものです。つまり、海洋プラスチックの問題は我々ひとりひとりが真剣に考えるべき問題なのです。

海といえば青く透き通った美しい海原を、私たちはイメージすることができます。しかし、その光景が数十年後にも残されている保証はありません。残念なことに、2050年には海洋における魚の総重量を、プラスチックごみの総重量が上回ると予測されています。これから生まれてくる子どもたちに美しい海を残すことができるのは、今生きている私たちだけです。

フランスの脱プラスチックに向けた政策とは

今日世界を見渡すと、大量生産・大量消費から脱却し資源が循環する社会を目指そう、と大きな方向転換を図る国が多く見受けられます。フランスでも脱プラスチックや循環型社会を目指して、精力的な取り組みを行っています。

循環型社会への転換を目的として2020年に成立した法律では、積極的な数値目標を示しています。例えば、2025年までにプラスチックの100%リサイクル、2030年までに使い捨てペットボトルを50%削減、住民1人当たりの家庭ごみを15%削減、2040年までに使い捨てプラスチック包装の終了と、組織や企業だけでなく国民にも改善を求めています。残り1年未満になった目標もありますが、過去既にさまざまな施策を実施しているため、フランスでは環境問題対策の土台が築かれています。

日本でレジ袋が有料化したのは2020年からですが、フランスでは2016年に禁止されています。翌年には、野菜や果物を入れるビニール袋もプラスチック製が禁止されました。フランスではこれらの袋が年間170億枚使われていましたが、それが丸ごと削減へと繋がりました。

さらに2020年には綿棒やカップ、プレートと合計3種類の使い捨てプラスチック製品の使用が禁止になり、翌年は使い捨てカトラリーやストロー・マドラー、テイクアウト容器の蓋など数種類のプラスチック製品が使用禁止になっています。2022年にはペットボトル削減に向けて、公共の建物には水飲み場を設置することが義務化されました。マイボトルに給水すれば、ごみも出費も削減できます。

また、2025年以降発売する洗濯機には、マイクロファイバーフィルターの装備が義務化されます。これは、洗濯の際に出るマイクロプラスチックの流出を防止することが目的です。衣料品に使われているポリエステルやナイロン、アクリルといった化学繊維はプラスチックの一種です。つまり、私たちは毎日の洗濯においてもマイクロプラスチックを流し続けていることになります。

これに着目したフランス政府は、洗濯機のマイクロファイバーフィルター装備義務化に踏み切りました。循環型社会を目指す上では、3R(リデュース/減らす、リユース/再使用、リサイクル/再生)が基本の考え方となっており、最も環境への効果が高いのがリデュース、次いでリユース、リサイクルの順番です。フランスは最も効果があるとされるリデュース(ごみを減らす、発生させない)を重視した施策を打ち出しています。

後編では、日本の状況と私たちが今できることを見ていきましょう。

Realization & Text : Ayako Ichimura 、Edit : Institut du bien-être 

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