オステオパシー

オステオパシー Ostéopathie/Osteopathy

オステオパシーとは、骨格や筋肉、内臓や神経など身体全体をひとつのものとしてとらえ、不調やトラブルの原因を探りながら、全体のバランスを整え、機能を回復させていく療法です。

手技療法により、緊張をほぐしたり、ゆがみを治しながら刺激を与えることで、自然治癒力を高め、痛みを軽減したり、症状の改善を図ります。整骨療法ともいわれます。

オステオパシーの歴史

オステオパシーは、ギリシャ語で「骨」と「病気」を意味する二つの言葉からなる造語です。

オステオパシーは、1874年にアメリカ人の医師アンドリュー・テーラー・スティルが考案しました。スティル医師は身体には自然治癒力があり、身体全体のバランスを手技によって整えることで、血液の流れが改善され、自らの力で身体の機能回復を図ることができると考えました。
オステオパシー医学はアメリカで発展を遂げ、その後20世紀になって、ヨーロッパにも伝わりました。
フランスにもオステオパシーの学校が設立され、2002年にオステオパシーが代替医療として認められるようになります。フランスでは2007年以来、オステオパシーの施術を行うには、国が認定した教育機関において専門教育を受け、資格を取得していることが必要とされています。

オステオパシーは現在も、日々の不調改善のための代替療法として、年齢を問わず多くの人に利用されています。

オステオパシーに必要なもの

オステオパシーでは痛みや不調の原因を検査し、手を使って施術を行っていきます。

オステオパシーでは骨格や筋肉、内臓、血管やリンパ、神経系などあらゆる器官はつながっており、相互に作用していると考え、身体全体をひとつのものとして捉えます。
身体のゆがみや緊張、トラブルが生じている部分を確認し、手で触れたり、圧を加えたり、振動を与えたり、動かしたりしていきます。また、手を使って関節や内臓、神経などへマッサージを行います(マニピュレーション)。

痛みや症状の現れている箇所を診るだけでなく、不調の原因はそれ以外の場所にあるかもしれないと考え、身体全体のバランスを確認しながら、調整していきます。

フランスにおけるオステオパシー

オステオパシーは、日々の不調改善や健康生活を維持するための代替療法として需要が高く、様々な目的で多くの人が利用しています。
腰痛や肩こり、関節痛のほか、ストレスや睡眠障害、妊娠中及び産後のケアに、またスポーツによる怪我の痛みの軽減やパフォーマンスの低下を改善するためなど、幅広く活用されています。

オステオパシーの施術者をオステオパット(Ostéopathe)と呼び、オステオパットがいるキャビネ(診療所)や病院で施術を受けることができます。オステオパットは個人で開業していることが多く、特に大都市には多くのオステオパットのキャビネが見られます。

オステオパットになるためには、国が認定した教育機関でオステオパシーに関する専門教育を受け、資格を取得する必要があります。

オステオパシーの効果

オステオパシーは、手技療法によって機能障害を改善していきます。

筋骨格系疾患の痛みを和らげるのに効果的で、特に腰痛治療に利用されます。慢性的な腰痛の持病がある場合は、オステオパシーによって薬の使用量を減らすことも期待できます。他にも、肩こりや首の痛み、筋肉痛や関節痛、スポーツによる怪我や捻挫などの痛みを和らげる効果もあります。
また、頭痛やめまい、神経痛、喘息の治療や手術後のリハビリテーションの一環としてオステオパシーが用いられることもあります。ストレス障害や不安、うつ病などの症状改善にも効果があるとされています。

また、オステオパシーは、関節痛や腰痛、消化器疾患といった妊娠中及び産後の女性特有のトラブルや不調の改善にも効果があるとされています。
オステオパシーは、子どもから高齢者、アスリートや妊娠中の女性など適応範囲が広く、薬を使用せずにできる代替療法としても幅広く活用されています。

一方で、オステオパシーの治療効果や安全性については、科学的根拠が不十分であるとされています。また、オステオパットの知識や技術、経験値によって施術内容や効果に差が出ることも指摘されています。

医療との関係

オステオパシーの施術はオステオパットが行います。医師や運動療法士(kinésithérapeute:キネジテラプート)などが、オステオパシーの資格を取得することもあります。

オステオパットの施術は通常45分から1時間ほどです。オステオパットは最初に問診を行い、痛みや症状、治療状況、最近手術を受けたか、などについて確認するほか、仕事や趣味など患者の生活習慣やストレスの状態などについても聞き取りを行います。
その後、患者の姿勢や動作を観察し、実際に身体に触れながら痛みや筋肉の緊張、骨格のバランスなどをチェックし、手を用いたマニピュレーションにより刺激を与えながら調整していきます。
施術の回数は症状によって異なります。1回の施術で終わることもありますが、基本的に数回継続して行われることが多く、だいたい3回ほどの施術で効果が現れると言われます。

オステオパシーによって痛みが軽減され、また投薬量を減らす効果も期待されており、オステオパシーは医療を補完する代替医療として用いられています。
なお、オステオパットは医師ではないため、病気の治療や薬の処方をすることはできません。身体の不調やトラブルの裏には病気が隠れていることもあるため、最初に医師の診断を受けることが推奨されています。

オステオパシーは馬や牛、ヤギなどの動物や犬や猫などのペットの治療にも活用されています。

日々の生活での取り入れかた

オステオパシーは手技療法により身体全体のバランスを調整することによって、自然治癒力を高め、人間が本来持っている自分自身の力で不調を改善していく療法です。

オステオパシーには痛みの緩和や症状の改善だけでなく、体調を整えたり、予防の効果もあります。
痛みが現れたり、症状がひどくなる前に、不調やトラブルを感じたら早めにオステオパシーを利用して身体をケアしてあげることも重要です。同時に、自然治癒力を高める生活を心がけることで、セルフメディケーションを行うこともできます。

オステオパシーは子どもや高齢者、妊娠中の女性など、薬に頼りたくない場合の不調改善の選択肢のひとつとしても活用されています。ただし、オステオパシーはあくまで代替医療であるため、必ず最初に医師に相談するようにしましょう。

日本におけるオステオパシー

日本にオステオパシーが入ってきたのは、20世紀になってからのことです。オステオパシーはカイロプラクティックと同時期に日本に伝わり、その後は整体の一種として行われてきたようです。

欧米に比べて、日本ではまだオステオパシーの認知度は高いとは言えません。
日本ではオステオパシーの施術を行うのに国家資格は求められておらず、技術や知識、経験も施術者によって様々です。オステオパシーの施術者は「オステオパス」と呼ばれ、欧米ではオステオパスのための専門的な教育機関があり、国家資格が与えられる国もありますが、日本ではまだこういった制度はありません。

日本でもオステオパシーの施術を受けることができます。国家資格が必要な「理学療法士」や「柔道整復師」がオステオパシーを学び、施術を行っていることもあります。
施術の効果や安全性の観点からも、専門教育機関で十分な教育を受け、知識や技術を有しているオステオパスの施術を受けることが推奨されます。

アメリカやイギリス、フランスなど欧米の専門教育機関で学んだオステオパスが日本でも開業しており、施術を体験できる場所もあります。

オステオパシーの費用

オステオパシーの施術料金は、施設によっても異なりますが、7,000円〜8,000前後です。初回料金が加算されることもあります。
施術時間はだいたい40分から60分ほど、初回の施術では20分〜30分ほど施術時間が長くなる場合もあります。
症状によって1回の施術で終了する場合と、継続的な施術が必要になる場合と様々で、それに応じてかかる費用も異なります。
また、医療保険は適用されないため、全額自己負担になります。

オステオパシーについて学びたい場合は、専門の学校で学ぶこともできます。また、留学して海外の専門教育機関で学ぶという方法もあります。オステオパシーに関する書籍も販売されています。

オステオパシーと資格

オステオパシーの知識や技術を活かすには、オステオパスやテラピストとしての活躍や、講座やセミナーの講師としての活動、また独立開業などが考えられます。

オステオパシーの診療や施術を行うのに、国家資格は必要ありません。
しかし、オステオパシーでは医学の知識をはじめ、解剖学や生理学といった専門的な知識が求められます。また施術を行うにあたって技術や経験も必要になります。
民間団体がオステオパシーについての講座やセミナーを行ったり、資格の認定を行っています。

また「理学療法士」「按摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」などの国家資格を有する方が、オステオパシーの知識や技術学び、オステオパスとして活躍することもあるようです。

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