ナチュロパシー

ナチュロパシー Naturopathie/Naturopathy

ナチュロパシーとは、植物療法や運動療法、食事療法などを取り入れながら、心身のバランスを整え、健康を維持していく自然療法です。
ナチュロパシーは病気の症状を改善するだけでなく、病気を引き起こす原因を取り除き、自然治癒力を高めることが重要であると考える療法で、中国医学やインドのアーユルヴェーダ医学といった伝統医学に通ずるものがあります。ナチュロパシーはホリスティック医療のひとつです。

ナチュロパシーの歴史

自然療法は自然な手段を用いながら、人間が本来持っている自然治癒力に働きかけ、心や身体のバランスを取り戻す療法で、古代ギリシアの「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスの教えに基づくと言われます。

「ナチュロパシー」という言葉は比較的新しく、19世紀の終わりにドイツからアメリカに移住した医師、ベネディクト・ルストによって広められました。やがて近代医学の発展とともにナチュロパシーは一時衰退しますが、その後、医療を補完する役割を果たすようになっていきます。

フランスでは1930年代から1940年代にかけて、生物学者のピエール・ヴァロンタン・マルシェソーによって自然療法が広まります。彼は、フランスの「ナチュロパシーの父」と呼ばれ、パリに自然療法の学校を設立し、多くの自然療法士がそこで学びました。

ナチュロパシーは、現在も健康なライフスタイルを維持するための自然療法として、広く活用されています。アロマテラピーやフィトテラピー、ホメオパシーといった様々な療法が、日々の不調改善やセルフメディケーションとして利用されています。

ナチュロパシーに必要なもの

ナチュロパシーは様々な自然療法を組み合わせて、自然治癒力を高めていく療法です。

ナチュロパシーでは、食事療法と運動療法、そして、ストレス管理やリラクゼーション、カウンセリングなどの心理療法を用いて、生活改善やアドバイスを行います。この3つは健康を維持するために重要で欠かせないケアと考えられています。その他にも、状況に応じてアロマテラピーやフィトテラピー、オステオパシーやカイロプラクティック、鍼灸治療や水治療法、ホメオパシーや漢方、呼吸法やヨガなど、様々な療法を活用し、健康な状態へと導いていきます。

また、必要に応じて精油やハーブを取り入れたり、サプリメントなどの健康食品を活用したり、ホメオパシー薬を服用するなど、症状や身体の状態などを見ながら不調の改善を図っていきます。

フランスにおけるナチュロパシー

ナチュロパシーで使われる精油やハーブ、サプリメントなどの製品は、薬局や「Herboristerie(エルボリストリ)」というハーブ専門店、BIOショップなどで購入することができます。

フランスは食の安全に対する意識や健康志向が高いと言われ、オーガニック食品やオーガニック製品がBIOショップやスーパーマーケットなどで手軽に手に入り、商品の種類も豊富です。

また、ナチュロパシーは健康な身体づくりのために、スパやタラソテラピーセンター、フィットネスセンターやジム、高齢者施設など、幅広い場所で活用されています。

ナチュロパシーの効果

ナチュロパシーは普段の食生活を見直したり、生活習慣を改善することで病気を予防し、健康増進を図っていく療法です。

疲労や不眠、便秘やストレスといった不調の改善を図るだけでなく、その原因を取り除くことが重要であると考えられ、予防や健康管理を行いながら、生活の質を向上させていくことが重要視されています。
本人が自発的に健康であるために行動し、健康への意識を高めることで、心身ともに良いバランスを保つことができます。

一方で、ナチュロパシーで用いられる療法の中には、診療内容や治療の有効性について、科学的根拠が十分でないとされるものも多く見られます。
また、自然なものや自然由来の製品が常に安全であるとは限らず、場合によっては有害な作用をもたらすものもあります。精油やハーブを用いた植物療法と同様に、妊娠中の女性や子ども、持病がある場合などには注意が必要であったり、時には禁忌となるものもあるため、事前に医師に相談するなどして、適切な治療法の選択や安全な使用を心掛けましょう。

医療との関係

ナチュロパシーは主に病気の予防を目的として行われます。
自然療法士(naturopathe(ナチュロパット))は、不調を改善し、健康な生活を送るためのアドバイスを行います。フランスでは自然療法士になるために、国家資格は求められていないため、誰でも自然療法士を名乗ることができます。そのため、自然療法の専門学校で学び、定期的に職業訓練を続けているなど、専門知識を十分に備えた自然療法士を選ぶことが推奨されています。

自然療法士との相談時間は、1時間からそれ以上続くこともあります。自然療法士は、現在の病気の症状について確認するだけでなく、ライフスタイルやストレスの状態、食生活や運動状況、本人とその家族の病歴などを聞き取りながら、生活習慣へのアドバイスや適切な自然療法を提案します。

自然療法士は医療専門家ではないため、診断や治療、薬の処方をすることはできません。

また、ナチュロパシーはペットや動物の健康維持のためにも活用されています。病気の治療や薬の処方は獣医師が行いますが、自然療法士は自然な方法を用いて、動物が健康に過ごせるよう飼い主にアドバイスをします。

ナチュロパシーは医療を補完する役割を果たすものであり、医療や投薬治療に代わるものではありません。自然療法を優先し、医師の診断を受ける機会を失い、病気の発見が遅れるリスクも指摘されています。また、重大な疾患や手術が必要な場合などには、早急に医師の診断を受け、適切な治療を受けることが必要です。

日々の生活での取り入れかた

ナチュロパシーでは様々な療法を用います。その時々の不調に合わせて最適な療法を取り入れたり、また普段から、健康な生活を心掛けるために役立てることもできます。

アロマテラピーやフィトテラピー、食事療法や温泉療法などは、薬の副作用や服用量を減らしたり、症状や痛みを緩和するなど、医療を補完する役割を果たすこともあります。

良質な睡眠や適度な運動、バランスの取れた食事にビタミンの補給、ストレスを回避し、好きな音楽を聴いたり、読書をしてリラックスした時間を過ごすこと、海や山に出かけ、動物や自然と触れ合うことなどは、心身ともに健康な状態であり続けるために、とても大切な要素と考えられています。

病気になってからではなく、元気なうちから健康な生活習慣を身に着けることで、心身ともにより良い状態で毎日を過ごすことができるよう、ナチュロパシーは私たちの健康生活をサポートしてくれます。

日本におけるナチュロパシー

アメリカやオーストラリア、ドイツなど、ナチュロパシーが人々の生活の中に取り入れられている国に比べ、まだ日本ではナチュロパシーの認知度は高いとは言えません。
欧米ではナチュロパシーの施術者は「ナチュロパス」と呼ばれ、「自然療法医」や「自然療法士」と訳されます。ナチュロパスになるための教育機関があり、国家資格が与えられる国もあります。日本には、こういった制度はありません。

一部の医療機関やクリニック、動物病院等では、ナチュロパシーの診療を行っている場所もあります。

ナチュロパシーで利用されるアロマテラピーやフィトテラピー、漢方や針灸治療、手技治療といった療法は、日本でも代替医療として利用されています。
こうした自然療法は、病気の予防や痛みのケアなど、現代医療では対応しきれない分野を補完するものとして、医療や介護の現場でも活用されるようになってきています。

一方で、ナチュロパシーで用いられる療法の中には、その有効性が科学的に証明されていなものも多く、あくまで医療を補完するものとして活用することが推奨されています。

ナチュロパシーの費用

ナチュロパシーの診療は自由診療となるため、場合によっては高額な費用がかかることもあります。
またナチュロパシーで利用される精油やハーブ製品、サプリメントといった栄養補助食品、ホメオパシーで利用されるレメディなどは、医療保険の適用にはなりません。

お金をかけずとも、日頃の生活習慣の見直しやライフスタイルの改善など、健康な生活を心がけることで、ナチュロパシーを実践することもできます。

ナチュロパシーについて学ぶことができる専門スクールや教室もあります。本格的にナチュロパシーを学びたい場合は、ナチュロパスを養成するための教育機関が充実している国へ留学するという方法もあります。また、ナチュロパシーや自然療法に関する書籍も販売されています。

ナチュロパシーと資格

ナチュロパシーの知識や技術を活かすには、ナチュロパスやテラピストなどとしての活躍や、講座やセミナーの講師としての活動などが考えられます。
ナチュロパシーの診療を行うのに、国家資格は必要ありません。しかし、ナチュロパシーでは様々な自然療法を取り扱い、また精油やハーブを取り入れることもあるため、それらがもたらす作用や安全性、色々な治療法についての十分な知識や技術が必要になります。知識を習得するために、専門のスクールに通ったり、オンライン講座を利用できる場合もあります。
民間団体がナチュロパシーについての講座を行ったり、資格の認定を行っています。

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