ホメオパシー

ホメオパシー
Homéopathie/Homeopathy

ホメオパシーとは、人間が本来持っている自然治癒力に働きかけることで、症状を和らげたり改善していく自然療法です。 病気を引き起こす物質を身体の害にならない程度で微量に投与し、刺激を与えて治癒力を引き出します。同種療法や同毒療法とも呼ばれます。

これに対し、生じている症状とは反対の症状を引き起こす薬を投与し、治療する方法を逆症療法(アロパシー)と呼びます。こちらは、西洋医学で用いられてきた療法です。

ホメオパシーは病気に関連する症状だけでなく、身体的または心理的な側面や、病気を引き起こした原因も含め全体的にとらえていく治療法で、ホリスティック医療のひとつでもあります。

ホメオパシーの歴史

ホメオパシーは、18世紀後半から19世紀初頭にかけて、ドイツの医師ハーネマンによって体系化された治療法です。

「ホメオパシー」はギリシャ語で「類似の」「同種の」という意味の言葉と、「病気」を表す二つの言葉から成る造語です。
「類似したものが類似したものを治す」という「同種の法則」はホメオパシーの原理とされています。
ホメオパシーはヨーロッパやアメリカをはじめ、世界各地に広まっていきました。
やがて、近代医学の発展と共に、ホメオパシーの有効性について、度々議論が行われるようになります。

ホメオパシーの利用状況や規制状況は、国によって大きく異なります。
現在は先進国の多くが、ホメオパシーには十分な科学的根拠が存在しないとしており、かつてはホメオパシーが盛んで医療保険が適用されてきた国においても、医療保険の適用が廃止されてきています。
一方、インドやアフリカ、中南米など、現在もホメオパシーが広く活用されている国もあります。

フランスでは、ホメオパシーは自然療法のひとつとして、幅広い年齢層で利用されてきました。また、ホメオパシーの診療は医師が行い、医療保険が適用されていました。 最近では、ホメオパシー治療の有効性について、科学的証拠が十分ではないとの見解のもと、ホメオパシー薬が公的医療保険の還付の対象から外されることとなり、話題を呼びました。

ホメオパシーに必要なもの

ホメオパシーでは植物や動物、鉱物などの物質を高度に希釈し、振とうしたものを使います。これらは「レメディ」や「ホメオパシー薬」と呼ばれます。ホメオパシー薬は、希釈と振とうを繰り返すことで、より効果が高まると考えられています。

最もよく利用されているのは、錠剤や顆粒剤で、小さな砂糖玉のようなものです。舌の下に置き、溶かして服用します。
その他、希釈液やスプレータイプ、坐剤や軟膏、クリームなどがあります。
また、希釈する際にアルコールを用いることも多く、ホメオパシー薬にはアルコールが含まれることもあります。

ホメオパシー薬は非常に希釈されているため、もとの成分はほとんど含まれていない場合も多いと言われますが、中には成分が高い濃度で含まれるものもあり、身体への影響に注意が必要な場合もあります。 一般的に子どもや妊娠中の女性でも服用でき、副作用がほとんどなく安全であると言われていますが、服用上の注意をよく確認し、状況に応じて事前に医師に相談するなどして安全な服用を心掛けましょう。

フランスにおけるホメオパシー

フランスでは、ホメオパシーは代替療法のひとつとして、多くの人に利用されています。
2人に1人がホメオパシーを利用したことがあるといわれるほど、ホメオパシーは身近な療法です。

フランスでは、ホメオパシー薬を薬局で購入することができます。
ホメオパシー薬は風邪や花粉症、不眠や頭痛といった日々の不調を改善するための、セルフメディケーションとしても利用されています。ホメオパシー薬について、薬剤師に相談することもできます。 処方箋がなくてもホメオパシー薬を購入することはできますが、ホメオパシー治療は専門的な知識のある医師の診療のもとに行うことが推奨されています。

ホメオパシーの効果

ホメオパシー薬には様々なものがあり、含まれる活性物質やその希釈率によっても効果が異なります。

例えば、ホメオパシー薬としてよく利用されるアルニカは、山岳地帯に自生するキク科の薬用植物です。アルニカは植物療法でも広く活用され、抗炎症作用や鎮痛作用に優れ、捻挫やあざ、虫刺され、関節痛や筋肉痛の痛みといった症状を緩和する効果があります。軟膏やクリーム、マッサージオイルなどが一般的に使用されており、打撲の痛みを和らげ筋肉をほぐすのに役立ちます。

ホメオパシーではこうした外傷に対する治療に加え、感情的なショックやうつ病といった精神的な症状を改善するためにも用いられています。アルニカは通常、外用薬として利用されますが、ホメオパシーでは顆粒状のホメオパシー薬を経口摂取することもあります。

一方で、ホメオパシーの治療効果や有効性については、科学的根拠があるとする報告はほとんどありません。 また、ホメオパシーはあくまで代替医療であり、特に重篤な疾患や慢性的な疾患の場合は、ホメオパシー治療やホメオパシー薬だけに頼ることはせず、適切な医療を受けることが強く推奨されています。

医療との関係

フランスでは、ホメオパシーの診療は医療専門家にのみ認められています。ホメオパシー薬を処方できるのも医療専門家に限られています。

ホメオパシーの専門的な知識備えた医師を、ホメオパシー医師(homéopathe(オメオパット))と呼びます。
ホメオパシー医師は病気の症状だけでなく、患者の生活習慣や感情面、本人や家族の病歴などを聞き取りながら、患者であるその人を全体的に理解して診断を行い、ホメオパシー薬の処方を行います。

ホメオパシーは急性疾患または慢性疾患に関わらず、幅広い治療に用いられます。
風邪やウイルス性胃腸炎から、腰痛、関節リウマチ、頭痛、喘息や気管支炎、ニキビや湿疹等の皮膚疾患、月経痛などの婦人科系疾患、睡眠障害や不安障害など多岐にわたります。がん治療の副作用を軽減するために、ホメオパシー薬が使われることもあります。
また、ホメオパシー薬は、副作用のリスクが少ないため、ペットや動物の治療に用いられることもあります。

ホメオパシーの有効性については、度々議論が行われてきましたが、総じて科学的根拠はないとされています。2017年には、欧州科学アカデミー諮問委員会(EASAC)が、「ホメオパシーに、プラセボ効果以上の効果はない」と結論付けています。
また、ホメオパシーによって適切な治療を受ける機会が失われたり、治療が遅れるなどのリスクが問題視されています。 ホメオパシーは医療を補完する役割を果たすものであり、生死に関わるような重大な病気や手術が必要な場合などには、早急に医師の診断を受け、適切な治療を受けることが必要です。

日々の生活での取り入れかた

ホメオパシー薬は、薬になるべく頼らずに、自己の免疫力に働きかけて症状を改善することが出来るため、日々の軽度な不調改善のために利用されています。
ホメオパシー薬は急性疾患に対するセルフメディケーションに適しているとされ、鼻詰まりやくしゃみ、発熱といった風邪の症状や、打撲や筋肉痛、疲労やストレス、また乗り物酔いの症状緩和にも役立ちます。

日本におけるホメオパシー

日本でも、ホメオパシー医療は一部の医療機関やクリニック等で利用が可能です。しかし、ホメオパシーは日本で普及しているとは言い難い状況です。
過去には、ホメオパシー治療を優先し、適切な医療が受けられなかったことによる医療事故も起きており、2010年の日本学術会議において、「ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されている」との会長談話が発表され、日本医師会などがこれに賛成する声明を出しています。

日本ではホメオパシーに関する規制がなく、ホメオパシーの治療をするにあたって、国家資格は求められていません。また、ホメオパシー製品も医薬品としての取扱いはされていません。

ホメオパシーの費用

日本ではホメオパシーは自由診療となるため、全額自己負担となります。そのため、場合によっては、高額な医療費が発生することもあります。

また、日本ではレメディは薬局で販売されておらず、ホメオパシーの専門店や自然療法を取扱う店などで販売しています。
レメディの種類によっても値段が異なり、こちらも医療保険の適用とはなりません。

ホメオパシーについては、複数の民間団体が普及活動を行っており、ホメオパシーについての講座などが開催されています。また、ホメオパシーやレメディに関する書籍も販売されています。

ホメオパシーと資格

日本では、ホメオパシーの診療を行うのに、国家資格は求められていません。
海外では、医師にのみ診療を行うことが認められている国もあります。

ホメオパシーやレメディに関する知識を習得出来る場として、民間団体が講座を行ったり、資格の認定を行っています。 一部の医療機関や動物病院などでは補完代替療法として、ホメオパシー診療を取り入れている場所もあります。

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