キネシオロジー

キネシオロジー Kinésiologie/Kinesiology

キネシオロジーとは、筋肉の反応や反射機能を観察しながら不調の原因を探り、症状の改善を図る代替療法です。身体全体のバランスを整えることで自然治癒力を高め、心身ともに健康な状態へ導きます。
キネシオロジーという言葉は、ギリシャ語の「運動」と「学問」という意味の二つの言葉から成り、「身体運動学」や「運動機能学」といった学問や研究を表します。代替療法として行われるキネシオロジーは、このような科学的研究とは別のものとして考えられています。

キネシオロジーの歴史

キネシオロジーは、1964年にアメリカのカイロプラクター、ジョージ・グッドハートによって考案されました。彼はカイロプラクティックの理論をもとに、東洋医学の概念などを取り入れます。筋肉の強弱に着目し、筋肉が弱まる時は身体の不調やストレスと関連性がある場合が多いことに気づき、特定の病気の予防と治療を目的として、様々な手技による筋肉反射テストを考え出しました。筋肉反射テストを用いて身体機能を検査する療法は「アプライドキネシオロジー」と呼ばれています。

1970年代になると、アプライドキネシオロジーから、さらに様々なキネシオロジーの技法が生まれていきました。カイロプラクターであったジョン・シーは、アプライドキネシオロジーを一般の人々にも分かりやすく単純化した「タッチフォーヘルス(Touch For Health)」という健康法を考案し、広く普及させていきます。

こうしてキネシオロジーはアメリカから世界各地へ広がっていきました。
キネシオロジーがフランスに伝わったのは1980年代で、その後、キネシオロジーの学校が設立されていきます。キネシオロジーは、ストレス管理や健康予防に役立つ代替療法のひとつとして、現在も広く活用されています。

キネシオロジーに必要なもの

キネシオロジーでは筋肉反射テストを用い、筋肉の反応を見ながら心身の不調を探り、全身の筋肉のバランスを調整していきます。
筋肉反射テストにより、筋力の低下やバランスの乱れを発見し、なぜその筋肉が適切に機能していないのか理由を調べます。身体的、感情的、そして精神的な側面にアプローチし、感情や脳、筋肉などの関係に着目し、不快感や緊張の原因を特定して解決方法を探っていきます。

キネシオロジーには様々な種類があります。
アプライドキネシオロジーは、カイロプラクティックから発展した技法で、筋肉反射テストによって筋肉の強弱を調べ、バランスを調整しながら症状の改善や精神的問題を解決していこうとするものです。
他にも、心と身体のバランスを調整するタッチフォーヘルス、感情のストレスをコントロールするスリーインワンコンセプツ(3in1 Concepts)、学習意欲や集中力を高める教育キネシオロジー(ブレインジム(Brain Gym))、脳のキネシオロジー(LEAP)、健康キネシオロジーなど、様々なキネシオロジーがあります。

フランスにおけるキネシオロジー

フランスにおいても、アプライドキネシオロジーをはじめ、タッチフォーヘルス、スリーインワンコンセプツ、教育キネシオロジー、アスリートのためのキネシオロジーなど、様々なキネシオロジーが活用されています。

キネシオロジーは、専門的知識を有するキネジオローグ(Kinésiologue)のいるキャビネ(診療所)で受けることができます。キネジオローグになるために国家資格は求められていないため、誰でもキネジオローグを名乗ることができます。そのため、十分な訓練を受け、専門知識を備えたキネジオローグを選ぶことが推奨されています。

問診は通常30分から1時間ほど続きます。問診のなかで、身体の不調を改善し、健康を取り戻すためにどうすればよいか、不調の原因となっているものを見極めながらその解決方法を探り、ゴールを明確にしていきます。そして筋肉反射テストを行い、身体全体のバランスを調整します。

キネシオロジーは、ストレス管理や睡眠障害、依存症や不安障害などの症状緩和や改善を目的として利用される他、試験や出産、スポーツ競技や試合の準備などのために活用されることもあります。

キネシオロジーの効果

キネシオロジーは痛みの軽減や病気の治療に活用されるほか、とりわけ、ストレス管理や感情のコントロールなどに効果があるとされています。
ストレスや不安障害、うつ病などの症状、慢性疲労や睡眠障害といったメンタルトラブル、学習障害、アルコールやたばこなどの依存症の改善に活用されています。

キネシオロジーの適応範囲は広く、子どもから高齢者まですべての年齢層を対象としています。また、スポーツ選手が利用したり、教育分野における活用、自己啓発のツールとして用いられることもあるようです。
一方で、キネシオロジーの治療効果や有効性については、科学的根拠が十分でないとされています。

医療との関係

キネシオロジーの中でも、アプライドキネシオロジーは、治療を補完するための代替医療として用いられます。
医師や歯科医師、カイロプラクター、オステオパットなどがアプライドキネシオロジーについての専門教育や訓練を受け、治療や症状の改善に活用します。

アプライドキネシオロジーでは、問診や一般検査を行った後に、筋肉反射テストにより不調の原因を特定していきます。リンパ系を刺激したり血液循環を改善するために、手を用いたマニュピュレーションを行ったり、健康管理を目的として患者のライフスタイルにアドバイスを与えることもあります。

キネシオロジーはあくまで代替療法であり、医療や投薬治療に代わるものではありません。キネジオローグは病気の診断や治療、薬の処方をすることはできません。病気の治療のためには医師の診断を受け、適切な治療を受けることが必要です。

日々の生活での取り入れかた

キネシオロジーはストレスによって不調をきたしている時に、心身のバランスを整えるのに効果的であるといわれており、また、健康予防としても活用することができます。
例えば、一般向けの健康法として登場したタッチフォーヘルスは、身体の痛みやストレスケアなど心身の健康を維持するのに利用されています。タッチフォーヘルスはカイロプラクティックに東洋医学や栄養学、心理学などを取り入れた療法で、心と身体の両方にアプローチし、不調を改善していきます。

ただし、キネシオロジーの有効性については科学的な根拠はないとされています。
あくまで代替療法としての利用にとどめ、不調が続く場合や治療のためには、医療機関を受診するようにしましょう。

日本におけるキネシオロジー

日本でも、代替療法のひとつとしてキネシオロジーを行っている場所があります。しかし、キネシオロジーは、日本では普及しているとは言い難い状況です。

アプライドキネシオロジーはカイロプラクティックのひとつの技法として、カイロプラクティック施術院や整体院などで体験できることもあります。
日本ではキネシオロジーを行うのに国家資格は求められておらず、法的規制もされていないのが現状です。

キネシオロジーの費用

キネシオロジーには様々な種類があり、施術方法や金額もさまざまです。
クリニックなどで不調の原因を探るためにキネシオロジーを活用したり、筋肉反射テストが治療の中で用いられることもあります。カイロプラクティックや整体院、鍼灸院などで、アプライドキネシオロジーが施術に取り入れられていることもあります。
医療保険は適用されず、自由診療となります。

キネシオロジーについて学ぶことができる専門スクールや教室もあります。また、キネシオロジーに関する書籍も販売されています。

キネシオロジーと資格

キネシオロジーの知識や技術を活かすには、キネシオロジストやテラピスト、インストラクターなどとしての活躍が考えられます。講座やセミナーの講師としての活動や、教室を開くなど開業も考えられます。

キネシオロジーを行うために、国家資格は必要ありません。
キネシオロジーについて学んだり、筋肉反射テストやエネルギーの調整法などについての知識を習得できる場として、民間団体がキネシオロジーに関する講座を行ったり、資格の認定を行っています。

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