アロマテラピー

アロマテラピー
Aromathérapie/Aromatherapy

アロマテラピーとは、植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を使って、リラクゼーションを図るとともに、身体の不調改善に働きかけていく療法です。精油の香りには心と身体を癒やす効果があり、日本では芳香療法といわれます。

フランスでは、精油のもつ抗菌作用や治癒力、予防効果を上手に取り入れながら、家庭でできる民間療法として広く活用されています。

アロマテラピーの歴史

歴史を紐解くと植物やハーブを利用した療法というものは、古くから世界各地で行われてきました。ここから発展したのが、精油を用いたアロマテラピーです。「アロマテラピー」という言葉は、「アロマ(芳香)」と「テラピー(療法)」という二つの言葉からなる造語で、20世紀初頭にフランスのルネ=モーリス・ガットフォセが初めて用いました。

その後フランスでは精油の薬理効果に着目し、精油を医療の場面で活用していく研究が進んでいきます。アロマテラピーの概念は人々の生活の中に広く浸透し、現在は健康維持や病気の予防といった医療を補完する役割を担っています。

アロマテラピーに必要なもの

アロマテラピーでは植物の花や葉、根、果実、種子、樹皮などから抽出した、天然素材から作られた精油を用います。抽出方法には水蒸気蒸留法や圧搾法などがあります。精油のラベルには植物の通称名、植物の学名(ラテン語)、抽出部分と抽出方法、原産国などが記載されており、品質保持のため遮光瓶に入っています。

精油は精油の専門店のほか、雑貨店でも購入することができますが、天然成分100%の安全な精油を選ぶことが重要です。

アロマテラピーを行う方法はいろいろあります。アロマポットやアロマディフューザーなどの専用器具を使って香りを楽しむ芳香浴をはじめ、入浴や蒸気の吸入、アロママッサージや湿布、また精油のもつ殺菌作用を利用して、虫よけやお掃除に活用することもできます。

フランスにおけるアロマテラピー

アロマテラピーは精油と自宅にあるものを利用して始めることができるものも多く、日々の生活の中に取り入れやすい自然療法です。
フランスでは精油は薬局で購入することができます。肌トラブルや胃の不調、便秘、足のむくみ、ストレスといった健康上の悩みを、専門的な知識のある薬剤師に相談することで、症状の緩和や予防により効果的な精油を選ぶこともできます。

フランスには「Herboristerie(エルボリストリ)」といったハーブの専門店があり、こちらでも精油を購入することができます。また、BIOショップ(オーガニック/有機栽培製品の専門店)でも精油が販売されています。
化粧品やスキンケア、バス用品といった日常的に使用する美容用品を、自然由来の素材を使って自由にカスタマイズできる、精油の専門店も人気を集めています。

アロマテラピーの効果

精油には様々な香りがあり、また成分によって得られる効果や効能もそれぞれ異なります。
リラックス効果、免疫力を高める効果、自律神経を整える効果、そして抗菌効果や鎮静作用など多岐にわたります。

心を落ち着かせてくれるラベンダー、集中力を高めたいときのペパーミント、明るく前向きな気持ちにしてくれるオレンジスイート、リフレッシュにはローズマリーなど、その時々の心と身体の状態に合わせて、精油を使い分ける面白さもあります。

また、精油は傷の治療やウイルスなどの感染症に効果的であるといわれ、頭痛や咳、喘息や気管支炎、消化器疾患の症状を和らげる効果もあります。

なお、精油は成分が濃縮されているため、高い効果が得られる反面、時に身体に望ましくない影響を与えることもあります。正しい知識やアドバイスのもとで精油を選び、取り扱う際には注意事項を守って使用しましょう。また、アレルギーや持病がある場合、妊娠中の女性、使用に注意が必要な対象者と同居している場合などには、事前に医師に相談するなどして、安全安心な使用を心がけましょう。

医療との関係

アロマテラピーを医療や介護の現場に取り入れ、治療や症状改善に役立てているのが「メディカルアロマテラピー」です。

フランスでは医療行為の一環として、医療専門家(医師や薬剤師、獣医師など)がアロマテラピーを行うことがあります。
医師が治療のために精油を処方し、処方箋に従って薬剤師が調合する場合もあります。精油を坐薬として用いたり、経口摂取することもあるようです。これらの行為は必ず医療専門家の監督下で行う必要があります。また、薬と同様に、用法・用量や服用期間を守って正しく服用することが大切です。医療専門家の判断なく精油を経口摂取することは非常に危険な行為であり、注意喚起が行われています。

日々の生活での取り入れかた

フランスではアロマテラピーは日々のちょっとした身体の不調を改善し、身体本来の持つ自然治癒力を高めるために家庭でできるセルフケアのひとつです。

例えば、万能薬といわれるラベンダー精油。
リラックス効果の高いラベンダーは不眠解消に最適です。コットンなどに精油を1滴たらし、枕元に置いておくだけで、心地良い安らかな眠りをもたらしてくれます。

ラベンダーには鎮静作用や鎮痛作用もあるため、ストレスや疲れによる頭痛をやわらげてくれます。マッサージ用のオイルでこめかみをマッサージすると効果的です。

また、ラベンダーには殺菌効果もあります。コットンに精油を数滴染み込ませてクローゼットに置いておくと、自然由来の防虫剤として衣服を害虫から守ってくれるだけでなく、消臭効果ももたらしてくれます。

日本におけるアロマテラピー

日本では精油のもつ香りの癒やし効果に着目し、リラクゼーションや美容を目的としたアロマテラピーが広く親しまれてきました。これは、イギリスで発展したアロマテラピーです。

アロマオイルを使ったアロママッサージは、アロマテラピー専門のアロマサロンや、エステティックサロン、温浴施設、ホテルなどで受けることができます。

アロマオイルが肌から直接体内に浸透していくため、全身に効果がいきわたるとともに、マッサージによって血行が良くなり老廃物が排出されやすくなります。代謝がよくなることでむくみが解消されるなど美容の効果もあります。精油の香りは心を穏やかにし、自律神経を整え、身体を健康な状態へと導いてくれます。

一方で、日本においてもフランスのようにアロマテラピーを医療や介護の現場に活用していく取り組みが行われています。精油の持つ薬理効果を治療に役立てるほか、香りが脳に直接働きかける仕組みに着目し、精神面のケアや認知症状の改善・予防などに取り入れられています。

アロマテラピーの費用

アロマテラピーは、精油と自宅にあるものを使って簡単に始めることができます。精油はだいたい5mL~10mLから選ぶことができ、価格は精油の種類によって異なりますが、数千円から買い求めることができます。

アロマテラピーは、精油と自宅にあるものを使って簡単に始めることができます。精油は一般的に3mLや5mL、10mLといった単位で販売されており、数千円から購入できますが、精油の種類によって価格は大きく異なります。希少価値の高いものでは、3mLで1万円を超える高額なものもあります。

アロマテラピーを本格的に楽しみたい、癒やしの効果を高めたいという場合には、専用の器具を購入したり、専門のサロンでアロママッサージを体験したりと、目的や予算に応じて楽しみ方を選ぶこともできます。
アロマテラピーや精油についてより知識を深めたいという場合には、アロマテラピーの専門スクールや教室で学ぶこともできます。アロマテラピーを基本から学べるコースやより実践的なコース、1日体験講座などもあります。また、アロマテラピーや精油に関する書籍も豊富にあり、まずは独学で始めてみることも可能です。

アロマテラピーと資格

アロマテラピーの知識や技術を活かすには、アロマテラピストとして働くほか、インストラクターやアドバイザー、コーディネーターなどがあげられます。
アロマテラピーの専門サロンやアロマ用品の専門店、アロマに関連する企業への就職や転職が考えられます。また講師として活動したり、独立開業を目指すという道もあります。

アロマテラピストとして働くために、国家資格は必要ありません。しかし、実際に仕事をしていくうえでは、豊富な知識や技術、経験が求められます。
十分な知識や技術を習得するために、アロマテラピー専門のスクールや美容の専門学校で学んだり、通信教育を利用する方法もあります。

また、複数の民間団体がアロマテラピーに関する検定や資格の認定を行っています。

代替医療として医療や介護の現場に導入されているメディカルアロマテラピーでは、医療機関や介護福祉施設で使えるレベルの知識や実践的な技術が求められます。民間団体が実施するメディカルアロマ検定を活用したり、資格の認定を受けることで、メディカルアロマテラピストやメディカルアロマインストラクターなどとして活躍することもできます。看護師や介護福祉士といった専門職の方が、キャリアアップのためにメディカルアロマテラピーを学ぶケースも増えています。

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