フランスにみるヘアケア断食のすゝめ

日本人が驚くフランス人美容のひとつとしてあげられるのが、“フランス人は髪をあまり洗わない”ということ。フランスの記事を見ていると、1週間髪を洗わないで髪のスタイリングをどう楽しむかというテーマのものも見かけます。今回はその理由を考察しようと思います。

硬水は美容の大敵!?

まずひとつめが水道水の問題。日本の水道水は肌あたりの良い軟水なので、髪や肌を洗うことができます。
一方フランスの場合は、マグネシウムとカルシウムなどのミネラル分が多い硬水です。軟水で使用することを前提として作られた油分が少なめの日本のプロダクトを使っても汚れが上手く落ちなかったり泡立ちが十分でなかったり。さらには洗髪後も、髪がゴワゴワになったりパサつきが目立ってしまうということがよくあります。

多くのフランス人は、髪のコンディションを守るためにも洗髪を毎日行いません。なお、日々のクレンジングにおいては汚れをしっかり落とすため、あるいは肌を乾燥から守るために拭き取りタイプのクレンジングを日常的に使用しています。

細く繊細な髪質の持ち主

多民族国家のフランスでは、髪質もまた多種多様。最も多いとされる一般的なフランス人の髪質は、日本人の髪に比べ半分以下の細さといわれています。細く柔らかい繊細な髪質ということは、毛量自体も少なく見えてしまうため、フランス人にとってはいかにボリュームを出すかがスタイリングのベース。毎日髪を洗ってしまうとボリュームダウンしてしまうこともあるので、これも毎日の洗髪が敬遠される理由のひとつでしょう。

また、髪を洗ってから2〜3日後が、頭皮から出る油分とも合わさってベストコンディションと感じる人も少なくありません。
余談ですが、フランス人にとって日本人が持つ、太くコシのある艶やかな髪質に強い憧れを持つ人もいます。

さらにはシニヨンやポニーテールが好きなフランス人にとっては、この油分が程よいまとまりをもたらしてくれるのです。髪にスプレーやジェル、ワックスなどをつけたがらない彼女たちにとっては、この“天然のスタイリング剤”を活用しない手はないということになります。

湿気のない乾燥した大気

日本とフランスの大きな違いが湿度。日本は初夏にかけて湿度が一気に上昇するので肌や髪に不快感を感じることがよくあります。一方でフランスは年間を通して湿度が低く、室内に洗濯物を干すと数時間でカラカラに乾いてしまうほど乾燥しています。

そのような気候条件もあり、フランスでは毎日髪を洗わなくとも頭皮に不快感を覚えることが少ない、あるいは毎日シャンプーをしてしまうと頭皮がかえって乾燥して皮むけなどを起こす場合があるのです。髪を洗いすぎないというのは、髪や頭皮を美しく保つためのフランスならではの美容法ともいえるでしょう。

フランス人が愛用するヘアケア

アジア人よりも毛量が少なく、髪が細いとされるフランス人がシャンプーやコンディショナーを選択するとき、特に注目するのが“ボリュームと輝き”。髪を洗うこと自体が週に2〜3回程度ということもあって、普段のシャンプーではボリュームを出すものをメインに、スペシャルケアとしてツヤを与えてくれる栄養豊かなヘアマスクを投入する、という方法が傾向として見られます。

また、髪を洗わない日はスタイリング剤としてドライシャンプーを使用することで髪にボリュームを与えるということも。

なお、日本でも数年前からドライシャンプーを利用する人が増えてきましたが、その理由はフランスとは異なります。疲れて髪を洗えないときにニオイを抑える、あるいは皮脂を抑制するために使用するなど、マナー的側面から活用する人が多いようです。

環境に配慮したシャンプー

シャンプーバーと呼ばれる固形状シャンプー(別名:ソリッドシャンプー)の魅力は、環境にとても優しいこと。「Planetoscope」の調べによるとフランスでは毎秒5個、そして1日47万6千ものシャンプーボトルが消費されているとのこと。
一方、シャンプーバーは紙での舗装が一般的。プラスチックやシャンプーを作る際に使用する水の削減、さらには輸送における環境の負荷を軽減できることが、環境問題に敏感な人々の心を掴んでいます。

また、天然のクレイやココナッツオイルなどの自然由来の成分が、洗浄や保湿を担ってくれるのも魅力的。小さめのシャンプーバーでも、1〜2カ月は持つのでお財布にも優しいのが嬉しいですね。

日本人の私たちが取り入れたいポイント

毎晩、あるいは朝夜と丁寧に髪を洗っているにもかかわらず、髪の悩みが絶えない場合は、髪を洗いすぎて負荷をかけすぎているのかもしれません。フランス人のライフスタイルを参考に、思い切って“髪を洗うのをやめてみる”のも一つの方法です。

日本の場合は水道水が軟水で美容にとってはとても良いので、髪を洗う頻度についてはフランス人のように極端に減らす必要はないと思います。しかし、ドライヤーの熱風やバスルームやドレッサーに並んだ数多くのヘアケアプロダクトたちが、髪や頭皮の負担を増やしてしまう場合があることも頭の片隅に置いておきましょう。

フランスにみるヘアケア断食のすゝめ

毎日洗っていたところを、まずは1日おき、そして2日おきと少しずつ日数をのばしながら自分の頭皮を見極めてください。日本は湿度があるので、長期間のライフスタイルに一番マッチしたゾーンを探してみてください。

ここからは個人の感想になりますが、2週間した頃には、頭皮も髪もデトックスされたのか、子供の頃のような柔らかい本来の髪質に戻りました。頭皮がクリアな状態になると、強い香料や油分過多な製品に対して敏感にセンサーが働くようになることも。これを機にコンディショナーやトリートメントは使用しないスタンスに。頭皮にも髪にも、そして環境にも優しい習慣を継続することができています。

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