個人主義とビヤンネートルの考え方
「なぜフランス人はビヤンネートル、つまり自分の状態を心地よくすることにこだわるのか」
先日、この興味深いテーマについて、あるフランス人の女性と話し合う機会がありました。
彼女の答えは「フランス人は個人主義だから」とのこと。つまり、まず第一に自分自身の幸せを追求することに重きを置いているがゆえに、自分が今どう感じるのか、自分がどうありたいのか、自分の感情がどうなのかなどを頻繁に内省したりするとのことでした。
ただ、それは単にエゴイストということではなく続きがあって、自分が満たされた状態になってこそ、初めて他人にも優しくできるという考え方なのでした。「誰かに優しくあるために、自分自身は幸せでなければならない」これは納得の一言でした。
心に余裕がなければ、他者に対する思いやりを持つことは難しいものです。アスリートのように最高のパフォーマンスを発揮するために、自分自身のコンディションを整えておくと考えれば、わかりやすいかもしれません。他者なくして人は生きることはできません。自分の人生を豊かにしてくれる周りの人々のためにも、まずは自分が幸せになることにフォーカスするというのは、私たちが見習うべき姿勢の一つと言えるかもしれません。
とはいえ、日本人ならではの「利他の心」や「三方良し」という他者をとても大切にする考え方は、私たちが世界に誇る美徳の一つでもあります。もちろん、自分を犠牲にしすぎて心が疲弊しては元も子もありませんが、これらの考え方はこの先の社会や環境問題を考える上で凄く大切な要素です。
古くは、自然を異郷や征服すべきものとして捉えていたフランスも、最近ではかつての日本人のように自分たちの豊かさのみならず、自然との共存や調和を考えるようになってきました。実際に、持続可能な開発目標であるSDGs達成度のランキングで、フランスは2017年以降上位10カ国に入り続けています。さらに2018年から2020年までは4位と、日本と比べてみても一歩先をゆく存在となっています。
お互いに見習うべきところが多い両国。フランスと日本の良いところを共に学び合いながら、自分を心地よく保てるようになりたいですね。そして、それが他者への思いやりにつながり、ひいては誰にとっても優しく豊かな社会の実現につながれば言うことはありません。まずは、自分自身が幸せであることを意識するところから始めてみてはいかがでしょうか。